高校野球には、選抜高等学校野球大会(以下選抜)に繋がる「秋季大会」、
全国高等学校野球選手権大会(以下選手権)の前哨戦となる「春季大会」、
選手権の予選となる「全国高等学校野球選手権大会(以下選手権大会)」の3つの公式戦があります。
山梨県の出場校数は35校(2018年第100回選手権大会出場校数)と、
比較的少ない学校数となっています。
最近では私立高校が優勢となっているものの、公立にも古豪となる学校は有り、
優勝校だけをみると固定されているように感じますが、
ベスト4の顔ぶれは毎回違っていることから群雄割拠の様相を呈しています。
以下に2009年からの山梨県の各大会の結果をまとめました。
春季大会 | 選手権予選 | 秋季大会 | |
2018 | 山梨学院 | 山梨学院 | 山梨学院 |
2017 | 山梨学院 | 山梨学院 | 東海大甲府 |
2016 | 山梨学院 | 山梨学院 | 山梨学院 |
2015 | 東海大甲府 | 東海大甲府 | 東海大甲府 |
2014 | 甲府工業 | 東海大甲府 | 東海大甲府 |
2013 | 山梨学院大附 | 日川 | 山梨学院 |
2012 | 山梨学院大附 | 東海大甲府 | 日川 |
2011 | 東海大甲府 | 山梨学院大附 | 東海大甲府 |
2010 | 日川 | 日川 | 甲府工業 |
2009 | 富士学苑 | 山梨学院大附 | 富士学苑 |
※1.表内の校名は略称になります
※2.山梨学院大附は2016年から改称し山梨学院となっています
各大会における近年の結果をまとめると、やはり優勝校の名前が固定されているように感じます。
これは山梨県内の有望な選手が散らばることなく、
上位私立に集中しているためと考えます。また上位私立は越境入学の受け入れもしていることから、選手層は厚くなっています。
なおそれらの選手を育て上げる指導者の手腕や求心力も高いと推測できます。
なお近年こそ私立校が良い成績を上げていますが、それ以前は公立校が良い成績を上げていました。
そのため、私立校が近年好成績を上げていますが、私立校は「強豪として歴史」が浅いことが山梨の特徴になります。
それでは、事項より各大会の結果における、特に近年成績が安定している3校をTOP3として紹介したいと思います。
Contents
山梨学院高等学校(山梨学院)
■【概要・成績】
山梨県甲府市にある私立の高校になります。
山梨学院大学の附属校でもあり、2016年の変更前は山梨学院大学付属高等学校という学校名でした。
公式野球以外にも体育系の部活動の強豪校としてしられており、
特にサッカー部は全国優勝を果たすなど全国的にも有名です。
駅伝部も全国制覇しており有名です。
山梨学院大学の駅伝部は箱根駅伝にも出場しており有名ですが、毎年ケニア人留学生がいることもでも有名です。
ケニア人留学生は高校の駅伝部所属を経て大学進学するそうです。
選手権への出場回数は8回で山梨歴代2位タイ、
選抜への出場回数は2回で山梨歴代4位タイとなっています。
選手権での成績としては、2勝8敗となっています。
選抜では1勝2敗となっており、春・夏ともに最高で二回戦敗退となっており、いずれも全国では良い成績は残せていません。
■【特色】
現在山梨学院を率いているのは、
長崎県の清峰高校を率い春夏5度の甲子園出場を果たした吉田洸ニ監督になります。
吉田監督はメディアの取材に対し、
重視していることとして「体力づくり」を上げています。
これは清峰時代の2006年選抜決勝で横浜に0対21で破れた際に体力の差を感じたことに起因しているようです。
そのため練習では体力づくりのトレーニングと、身体を作るための食事にも気を使っているそうです。
なおトレーニングにあたっては「選手のパフォーマンスを高める」ことを重視し、
筋肥大よりも「野球に活かす」ことを念頭にトレーニングしています。
また、身体づくりにあたりトレーニングの妨げとなるケガや慢性疲労を取り除く目的で週に一度、完全休養日があります。
定期的に心身ともにリフレッシュすることで、ケガの防止とともに、練習の質を維持することも目的としているようです。
またトレーニングはコーチが始動することで正しくトレーニングを行える環境が整っています。
監督はこういった練習の姿勢を観察し選手を選ぶことから、身体だけでなく、精神面も強い学校であると考えます。
■【練習環境】
学校から徒歩圏内に専用の野球場があり、寮は野球場に併設されていることから野球に打ち込める環境は揃っています。
グラウンドは内野が土、外野は芝となっており、練習場所としては申し分有りません。またトレーニングルームもあることから、
身体作りにも打ち込める環境になっています。
■【現役プロ野球選手のOB】
明石 健志(ソフトバンク):山梨学院→福岡ソフトバンクホークス(2003年ドラフト4位)
東海大学付属甲府高等学校(東海大甲府)
■【成績】
山梨県甲府市にある私立学校であり、名前に有るとおり東海大学付属高校の一つになります。
山梨県の高校としては、近年は上述した山梨学院と知名度を二分する高校になります。
しかし、山梨学院よりも強豪校としての歴史が古いことから、選手権への出場回数は13回で山梨歴代1位、全国でも歴代46位タイとなっています。
選抜への出場回数は5回でこちらも山梨歴代1位となっています。
なお選手権での優勝はありませんが、ベスト4を3回経験しており、通算での戦績も20勝13敗と勝ち越しています。
選抜についても優勝はありませんが、ベスト4を2回、ベスト8を1回経験しており、通算での戦績も8勝5敗と勝ち越しています。
■【特色】
東海大相模の方針は、実力が有れば一年生の段階から試合に出し育てるというものです。
そのため、「早く実戦に出たい」「自分出られる実力がある」と思う選手は進学先として選択肢に入るかもしれません。
また、主な進学先となる東海大学も野球の強豪でありプロの注目も受けやすい学校であることから、長期的な目標を持つ選手にとっても良い学校だと考えます。
監督は東海大学相模から東海大学を経てプリンスホテルでもプレーした村中秀人氏になります。
高校時代には原辰徳氏をはじめとして、
後にプロ野球でも活躍する同期とプレーをしています。
キャリアの中で様々な選手を見た経験が、選手指導にも活かされていると考えます。
母校である東海大相模の監督経て、当時低迷していた東海大相模の再建に乗り出します。
なお、自信が連投で肘を故障した経験から、選手の投球数を管理し、選手をケガから守ろうとしている方針も無視できません。
東海大甲府の特徴というと、冬のキャンプが上げられます。
冬はボールをほとんど握らず、
ランニングやウェイトトレーニングで下半身や体幹を強化しています。
また身体を大きくするために食生活も指導することで、
選手たちは冬を越えると身体が大きくなっています。
この身体を土台に、「センターから逆方向に強い打球」を打つ練習をすることで、全国レベルの速球にも負けない打線を育て上げています。
また、「ビジョントレーニング」等、一般的な野球の練習とは違うことも、効果があれば積極的に取り入れている点も特徴です。
■【練習環境】
グラウンドは全域が土となっていますが、後者に隣接しており練習はしやすい環境だと考えます。
しかし室内練習場はなく、雨の日の練習場所には困るかもしれません。
越境して入学する選手も多く、校舎から徒歩圏内に寮があります。
■【現役プロ野球選手のOB】
高橋周平選手は史上初となる「甲子園出場無しの三球団強豪ドラフト1位」であることも話題になりました。
村中 恭平(ヤクルト):東海大甲府→東京ヤクルトスワローズ(2005年高校生ドラフト1位)
高橋 周平(中日):東海大甲府→中日ドラゴンズ(2011年ドラフト1位)
渡邉 諒(日本ハム):東海大甲府→北海道日本ハムファイターズ(2013年ドラフト1位)
山梨県立日川高等学校(日川高校)
■【成績】
日川高校は山梨県山梨市にある公立の高校になります。
野球部以外の部活動では、バスケットボールやバレーボールが全国レベルとなりますが、
特にラグビー部は全国大会(花園)の常連であり、強豪として全国的に有名になります。
野球部も甲子園のへの出場経験が複数回有ることから全国的に有名になります。
甲子園への出場回数は4回、選抜への出場回数は1回をとなっています。
なお甲子園での戦績は1勝4敗、選抜は0勝1敗となっています。
2013年に4回目の出場を果たし、初戦に勝利し待望の初勝利を挙げました。
↓甲子園で念願だった校歌を歌う日川高校
二回戦では森友哉率いる大阪桐蔭と対戦。
一点差で惜しくも破れましたが、9回に同点に追いつくなど、「大阪桐蔭圧勝」の下馬評にも関わらず最後まで追いつめる好ゲームとなりました。
2013年以降は山梨学院と東海大甲府に阻まれ甲子園への出場はありませんが、いずれまた好ゲームを見せてくれると思います。
■【特色】
日川高校は公立高校であることから、
越境で入学しているくる選手はほぼいなく、県内出身者しかいません。
バックグラウンドが近い同士、強豪の私学を倒すという目的で団結することから、結びつきの強いチームであると推測できます。
練習時間は平日は2時間程度、休日も3〜4時間程度となっています。
そのため少ない時間で効率良く、濃い内容の練習をすることを心がけているようです。
試合後はミーティングを重ね、反省点を抽出、それらについて短い練習時間解決を目指す。
そういった考えが選手一人一人に浸透していることから、効率でありながら強豪と呼ばれる地位を確立していると考えます。
日川高校を語る上で無視できないのは、前述した2013年の大阪桐蔭との一戦ですが、
この時の日川高校は一回戦に先発したエースではなく、二番手を先発させ「先手」を打つと、
二回にはスクイズで先制しここでも「先手」、盗塁死しても盗塁やエンドランを重ね常に「先手」取りにいきました。
これに監督は、
「常に『何かやってくる』と思わせる。
私立の強豪と10回やったら9回負ける。
残り1回をどう引き寄せるか常に考えていた」
とコメントしています。
また「相手より一歩前に出ていく野球をしなければいけない。公立校が勝つんだったら、積極的に行かなければという思いがあった。」ともコメントしています。
これらに共通するのは、「限られた戦力(材料)を最大限活用する」ことを重視している点です。これこそが日川高校の特色かもしれません。
■【練習環境】
平日の練習は前述したとおり、16時過ぎから2時間を目安に実施されます。
公立校としては珍しく、野球部専用のグラウンドが、校舎から徒歩圏内にあります。土のグラウンドですが、設備としては十分過ぎる環境だと考えます。
室内での練習場所は分かりませんが、ウェイトリフティングの強豪でもありますし、トレーニングルーム等はあるものと思います。
■【現役プロ野球選手のOB】
ラグビーの強豪であることから、有名ラグビー選手は多く輩出していますが、プロ野球選手は二人(内藤久氏、石川賢氏)となっており、
いずれも現役を引退しています。今後に期待したいと思います。
まとめ
今回は山梨の強豪校について紹介しましたが、山梨県は選手権の優勝、選抜の優勝はなく、勝利数も選手権が41、
選抜が23と決して多くないことから、
全国的には注目が薄い地域かもしれません。
しかし、私立優勢の中、公立との競い合いもあり、予選が面白い地域でもあります。
なお今回紹介しなかった強豪校としては、日本航空高等学校、甲府工業高等学校、甲府商業高等学校、市川高等学校があります。
いずれも近年は甲子園出場から遠ざかっていますが、山梨学院、東海大甲府を倒して甲子園で見られる日を楽しみにしたいと思います。
また、山梨全体のレベルが更にあがり、いつか優勝することも楽しみに待ちたいと思います。