野球の技術解説

プロ野球球史に残る「神走塁」を徹底紹介・走塁の極意を事例に学ぼう

プロ野球球史に残る「神走塁」を徹底紹介・走塁の極意を事例に学ぼう

野球における野手の要素としては「走・攻・守」と一般的に言われています。

」は打撃のことですが、

打撃の能力は技術や経験、

身体能力が占める割合が多く、

一朝一夕での上達は困難です。

」は守備のことですが、

守備の能力も技術や経験、

身体能力が占める割合が多く、

打撃と同様にすぐの上達は困難です。

一方、

」は走力ですが、

技術や経験も必要ですしスピードこそ身体能力次第ですが、

「意識」で改善できる領域が「攻守」よりはあると考えます。

経験による「スタートが切れる・切れない」の判断はもちろんありますが、

「一個でも次の塁へ」の意識は明日の練習から活かしていくことができます。

本記事は、球史に残る(かもしれない)名走塁TOP5を紹介することで、

「一見不可能な打球であっても、条件が揃えば次の塁に進塁できる」

ことを確認し、

「一個でも次の塁へ」

という意識付けと、進塁する勇気に繋げてもらえればと考え、作成しました。

《条件》
※選定は筆者の独断と偏見です
※紹介は順不同です
※盗塁は身体能力の割合も多いため、紹介するのは走塁のみとします
※日本プロ野球のみです

①1987年日本シリーズ第6戦×西武ライオンズ対読売ジャイアンツ

西武が日本一に王手をかけて臨んだ第6戦、8回二死ランナー一塁でランナーは辻発彦、

バッターは秋山幸二という場面。秋山が放った打球はセンターのウォーレン・クロマティは定位置の左側前方で捕球しますが、

ランナーは一気に本塁へ生還しました。

このプレーは二死なためボールがバットに当たった瞬間にスタートを切っていたこと、

クロマティの返球が緩慢であること、

セカンドの篠塚和典はバッターランナーを警戒しており一瞬だけ一塁側に視線をやったため三塁側が死角となったことが重なったため、

本塁の生還に繋がりました。

なお日本シリーズ前から巨人守備陣の甘さを把握していた守備走塁コーチの伊原春樹は、

第6戦では上記の辻の生還だけでなく、

二塁ランナーの清原和博をセンターフライで本塁に生還させています。

これは、センターのクロマティの緩慢な守備、

セカンドの篠塚和典が、清原が三塁を回っているのに三塁に投げる、

サードの原辰徳は三塁にタッチしようとする、

という3つのミスにより成功した走塁ですが、

守備側のミスや癖に乗じれば、

通常不可能である進塁も可能であることを示した走塁でした。

なお試合前のミーティングで「クロマティの返球が緩慢である」ことはチームに周知されていたそうです。

こういった情報の共有も簡単なようで難しいことであるため、真似した方が良い点であると考えます。

 

②2005年4月24日×中日ドラゴンズ対読売ジャイアンツ

中日が2点ビハインドの7回裏一死ランナー1、2塁、

一塁ランナーは荒木雅弘、バッターは井端弘和という場面。

井端が放った打球はセンターやや右の右中間に飛んでいきました。

守備側としては打球の方向的に、

通常であれば二塁ランナーの生還は諦め、

一塁ランナーの進塁を防ぐために、

センターは一刻も早く内野に送球すればベストな状況です。

実際にそのようにプレーが行われ、

①で紹介した動画のような緩慢なプレーも隙も見受けられないように思えます。

しかし荒木は本塁に生還しました。

このように「特に大きなミスや怠慢のない守備での一塁からの生還」はとても珍しく、

「走塁の能力は歴代トップクラス」と言われる荒木らしいプレーといえます。

また、このプレーだけでなく、荒木は他にも数回、一塁から本塁に生還を果たしています。

普段から一塁からの本塁生還を意識し、

守備陣状態・能力とどういった打球なら生還できるかを考えているからできた走塁だと思います。

簡単に真似できることではありませんが、

「自分の能力と相手(守備)の能力」を正確に把握しているからできるプレーでもあります。

そういった把握する力はすぐに手に入るものではないので、

試合や練習で意識してみることから始めると良いと考えます。

なお念のため補足ですが、

荒木は盗塁王を獲得していますしもちろん足は速いですが、

一塁への到達は早くても4.0秒と盗塁王としては特別速くもなく、

過去には「チームメイトのドミンゴ・グスマンの方が自分より速い」と発言する等、

人並みはずれた俊足というわけでありません。

足の速さでなく、観察力と状況判断力、

ベースランニングの速さが荒木選手の一番の武器だったのかもしれません。

③2006年パ・リーグ プレーオフ第二戦 福岡ソフトバンクホークス対北海道日本ハムファイターズ

日本ハムがアドバンテージを含めて2勝で迎えた第二戦。

後がないソフトバンクは、

この年投手四冠(勝利・防御率・奪三振・勝率)を達成しているエースの斉藤和巳を先発させます。

斉藤は期待に応える快投を見せますが、

打線は日本ハムのルーキーである八木智哉の前に沈黙。

両チーム無得点で迎えた9回裏、二死ランナー一、二塁で二塁ランナーは森本稀哲、

バッターは稲葉篤紀という場面。

稲葉が放った打球は、ピッチャー斉藤の足下を抜けるも、

セカンドの仲澤忠厚が好捕しますが、二塁へのトスは若干逸れてセーフ。

その間に二塁ランナーが本塁に生還しサヨナラとなる得点となりました。

このプレーは捕球から一連全てがギリギリのプレーだったこともあり誰も責めることはできませんが、

トスが逸れセーフとなった時点で次のプレーに切り替えるべきだったのかもしれません。

このプレーで学ぶべきは、

「守備側が怠慢や大きなミスをしていなくても次の塁へ進塁できることもある」

という点です。

もちろん基本的に三塁コーチが指示をすることから三塁コーチが優秀であったことはもちろんですが、

二塁ランナーとして「どの場所にどういった打球が飛んだ時、

「守備はどういった動きをするか」

「どういう条件なら自分は進塁できるか」

を想定することで、

実際のプレーで素早く判断し実行したことが要因であることは間違い有りません。

この試合のような1点の価値がとても高い(点を上げるのが難しい)試合では、

足を絡めた「1点」をもぎ取る攻撃が非常に有効です。

そういったことを教えてくれるプレーだと考えます。

④2006 5月10日 中日ドラゴンズ対日本ハムファイターズ

延長の11回一死ランナー二塁でランナーは英智、

バッターは井端弘和という場面。

1ボール1ストライクからピッチャーの岡島弘樹が投じた落ちるボールをキャッチャーの鶴岡慎也が大きく弾きます。

札幌ドーム広いスペースをボールが転がっていく中、

二塁ランナーの英智が本塁に生還します。

このプレーは、一見簡単にも思えますが、

動画を見ると英智は三塁手前で一切減速をしていません。

これは三塁を回る前に「本塁突入するつもりだった」ことを示しています。

またスタートのシーンはありませんが、

三塁への到達タイミングを見ると、

スタートが早かったか、

二次リードが大きかったか、

もしくはその両方であったと考えます。

また、ホームベースからバックネットまで距離がある札幌ドームの特徴も成功の鍵でした。

そういった環境の要素も頭に入れておくことで、

走塁の質と精度は向上させることができることを、

この走塁は示していると考えます。

2004年に就任した落合博満は「一芸に秀でたものを使う」と公言しており、

守備走塁が飛び抜けて優れていた英智はその象徴のような選手でした。

英智選手は身体能力も高く、頭一つ抜けていましたが、

その意識等「身体能力の活かし方」は大いに勉強になる点があります。

⑤2011年4月24日 オリックス・バファローズ対埼玉西武ライオンズ

6回裏無死ランナー一、二塁で二塁ランナーは後藤光尊、

バッターは北川博敏という場面。

北川は送りバントを実行、ボールはやや一塁側に転がり、

ピッチャーが捕球し一塁に送球している感に二塁ランナーの後藤が本塁に生還しました。

鍵となるのは二点だと考えます。

一点目は一塁側に転がったゴロをピッチャーとキャッチャーが追い、

ランナーが三塁を回るまでランナーを見ることなく一塁へ送球していること。

二点目はキャッチャーが本塁を空けてしまっていることです。

ランナーへのケアを怠ったことで、

ランナーのスタートに気づくのが遅れ、

対応が遅れています。

また、キャッチャーが本塁を離れてしまっていることから、

これも対応の遅れに繋がっています。

そのため、三塁手前で後藤選手は減速しているにも関わらず、

本塁への生還となりました。

この走塁は相手の隙を見逃さない洞察力の大切さを示しているとともに、

守備側についてはランナーへのケアとコミュニケーション(ランナーの動向を教える声)、

ベースから離れないということの重要性が分かるプレーだと考えます。

まとめ

記事では個人的に「球史に残る(かもしれない)走塁」と題して紹介させて頂きましたが、

いかがだったでしょうか?

記事のタイトルを見た際に頭の中に浮かんだ走塁は入っていたでしょうか?

今回選ばなかった走塁にも良い走塁はありますし、

私が知らない「神走塁」もあると思います。

そういった走塁は、久々に見てみると新発見があったりします。

是非、自分なりの視点で、振り返るきっかけにしてもらえればと考えています。

なお本記事の目的は、

「条件が揃えば一個次の塁にいける」

プレーを紹介することで、

「一個でも次の塁へ」

の意識をより強く持つことでしたが、実はもう一つ目的があります。

それは「守備側の視点でプレーを見ること」です。

守備の隙をついた走塁を紹介することで、

「その場にいた場合」に同じミスをすること防止する目的もあります。

自分はランナーである可能性もありますが、

当然守備側である可能性もあります。

両方の立場でどれだけリアルに今回紹介した状況を想定できるかで、

意識の伸び方は大きく変わります。

今回紹介した条件だけでなく、

プロでも友達でも他人のプレーを自分の経験値にする能力はとても大切な能力です。

ぜひ、他人のプレーを他人事だと思わずに、

自分に置き換える意識を持ってみてください。

なお他にも大切なことがあります。

それは、

「自分の能力を正確に把握する」

「洞察力や観察する力を育てる」

ことです。

野球に限らずですが、

自分が「何をどれくらいできるか」あるいは「何がどれだけできないか」を知ることはとても重要でかつ難しいことです。

しかし常に意識することでこの能力を育てることはできると考えます。

また、他人のプレーを見て何か「気づき」を得る能力もとても重要ですが、

これも教えてもらってできるようなものではなく、常日頃の意識が重要です。

こういった、野球の技術や能力だけでない意識だけであれば、

すぐ実行できるうえに、いずれはプレーの質向上に繋げることができます。

本記事が、そういった「意識」を考えるきっかけになれば幸いです。


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