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アスレチックスの戦術「マネーボール」とは?チーム躍進の理由を徹底解説!

アスレチックスの戦術「マネーボール」とは?チーム躍進の理由を徹底解説!

アイキャッチ引用:https://en.wikipedia.org/wiki/Moneyball_(film)

MLBで「オークランド・アスレチックス(以下アスレチックス)」と聞けば、多くの人は映画にもなった「マネーボール」を連想すると思います。

本記事では、アスレチックスの紹介とともに、「マネーボール」について解説したいと思います。

→ メジャーリーグ(MLB)と日本プロ野球(NPB)の違いについて。地区優勝って何?

アスレチックスとは

オークランド・アスレチックスはMLBのアメリカンリーグ西地区に所属する球団になります。

本拠地はカリフォルニア州オークランドにある、オークランド・アラメダ・カウンティ・コロシアムです。

球団名が長いことから「A’s(エーズ)」という略称で呼ばれることもあります。

1901年に創設され歴史のある球団だと言えます。

ちなみにMLBの前身ともいえるアメリカンリーグが自らを「メジャーリーグ」と宣言したのが1901年であり、ヤンキースやレッドソックス等の創設も1901年となっています。

長い歴史の中で、ワールドシリーズ優勝9回を誇っていますが、最後の優勝は1989年。

リーグ優勝も15回を数えますが、最後の優勝は1990年となっており、いずれも遠ざかってしまっています。

しかし地区優勝は16回で2000年代に入っても優勝していることから、ずっと低迷している訳ではなく、むしろ近年では安定してプレーオフに出場していると言うことができます。

2018年はワイルドカードシリーズへの進出も果たしています。

アスレチックスの特徴は「独特の運営方針」により「1勝に対するコストが低い」ことであると考えます。

球団の総年俸が高ければ1勝に対するコストが高くなりますが、アスレチックスは2019年の総年俸が30球団中26位とかなりコストを圧縮している球団だと言えます。

そのうえで、プレーオフに進出するほど勝ち星をあげているため、1勝に対するコストが低くなっています。

またアスレチックスというと、特徴的な球団運営方針や戦略も有名です。それらを次項で説明したいと思います。



マネーボールとは

冒頭でも紹介した「マネーボール」ですが、マネーボールはブラッド・ピット主演で映画化もされた書籍の名前です。

ちなみに英語版の副題は「The Art of Winning An Unfair Game(不公平なゲームに勝利する技術)」で、日本語版の副題は「奇跡のチームを作った男」です。

物語は、現在もチームのGMを務めている実在の人物であるビリー・ビーンを主人公としたノンフィクションで、貧乏球団と呼ばれたアスレチックスがどのようにプレーオフ常連になったかが描かれています。

下記にアスレチックスがプレーオフ常連になった要素を具体的に説明したいと思います。

◆アスレチックス躍進の理由

ビリー・ビーンGMは旧来の野球観に縛られるのではなく、セイバーメトリクス(野球におけるデータを統計学的に分析すること)を活用し、「勝利のために必要な要素」を抽出。

これを前提に選手やチームを編成しました。ビーンが考えるこの要素は、必ずしも年齢や評価に反映される内容ではなかったことから、比較的コストの低い選手でチームを編成できるのも特徴です。

また、成績に運(走者の有無)等が絡む不確定な要素を極力排除することにより、より選手個人の能力を純粋に評価している点も特徴です。

なお判断の基準には「得点期待値」というものが用いられました。

これは「どれだけ得点の可能性があるか」の数値ですが、ビーンは野手には得点期待値を上げるための要素を求め、投手には敵の得点期待値を下げる要素を求めました。

以下にビーンが「勝利のために必要な要素」と定義した項目を紹介します。

◆野手で重要視した項目

・出塁率

ビーンは「アウトにならない確率=打者が投手に勝つ確率」と考え、打率よりも出塁率を重視しました。ヒットの出塁も四死球での出塁も、「累上にランナーを出す」という結果は同じであることから理にかなっていると考えます。

なお打率の高い選手は高コストですが、打率が多少低くても出塁率が高い選手を優先する姿勢により、コストの圧縮も可能となりました。

・長打率

出塁率が高い選手をそろえても、四死球や単打のみでは一度に進める塁は一つだけです。

そこでビーンは長打率も重視していました。

なお長打率と出塁率を合算するOPSは広く球界に浸透していますが、通常は1:1で合算するのに対し、ビーンは出塁率と長打率の比率を3:1で合算していました。

より出塁率を重視していることが分かるかと思います。

・選球眼

ボールを見極める能力です。四球を選ぶために重要なのはもちろんですが、「打てる可能性の高い球を振る」ためにも重要です。

またビーンは待球打法を肯定しており、逆に初球から積極的に打ちにいくこと好みません。

これは球数を投げさせ疲弊させることで球の精度を落とさせ、さらに出塁率を上げることが目的です。

またビーンはリリーフ投手は先発より能力が劣ると考えており、リリーフ投手を引っ張り出すためにも、好んで待球打法を肯定していました。



◆投手で重要視した項目

・与四球

野手の「出塁率」の項で説明しましたが、「アウトにできない」ということは「投手の負け」とビーンは考えました。

よって守備側としては四球を与えることは望ましくないことから、投手の与四球数を重視しました。

なおビーンは敬遠について「相手の得点期待値を低下させることは稀」とし、戦術として用いませんでした。

・奪三振

様々な外乱に左右されることなく投手が確実に打者をアウトにできることから重視されました。

打球がフェアグラウンドに飛べば、安打や失策の可能性が発生しますが、奪三振にはそれらが無いためです。

・被本塁打

ビーンは被本塁打を「投手の責任による唯一の安打」とし重要視しました。

一方で被安打については、投手以外の責任や打球の方向等に運が絡むことから、ほとんど重要視されませんでした

・被長打率

長打は相手の得点期待値を上げてしまうことから、ビーンは投手の被長打率を重視しました。

その際、ゴロであれば長打となる可能性が低いことから、ゴロになる可能性も評価に含めていました。

◆重視しない要素

・バントや犠打

アウトカウントが増える一方で、得点期待値は強攻策の方が高いとし、ビーンは否定的でした。従来のセオリーでは送りバントとなるような場面で強攻策をとることも、ビーンの野球の特徴でした。

・盗塁やヒットエンドラン

犯すリスクの割に得点期待値は上がらないとし、累上で長打を待つ戦略を多く用いました。

・打点や得点圏打率

打点は走者の有無に左右され、それは打者の能力と関係ないことから、ビーンは打点とともに重要視しませんでした。

得点圏打率については、サンプルとなる打数が必然的に少なくなることから、根拠に用いるのは不確実として同様に重要視しませんでした。

・被安打数

フェアグラウンド内の打球については、打球の方向や野手の守備能力の影響が大きいため、投手の責任は少ないとし重要視しませんでした。

・防御率や自責点

被安打数と同様で、投手の責任ではない部分も含むことから、重要視されませんでした。

・勝利数やセーブ

采配でコントロール可能であることから、投手自身の能力は関係ないとし、重要視されませんでした。

・球速

必ずしもアウトを取る能力に結びつかないことから重要視されませんでした。球速よりも、投手に求められる要素を満たしていること重要視しました。

◆低年俸選手

限られた資金でチーム編成を行うため、アスレチックスは他球団からの評価が必ずしも高くない選手であっても、上記の「重要な要素」を備えていれば問題無いとし、積極的に獲得しました。

またそれは故障の経験者であっても同様でした。他球団の評価が高くないことから交渉を進めやすく、安い年俸でのチーム編成を可能にしました。

◆複数年契約

MLBではFAや年俸調停権を取得すると年俸が跳ね上がります。そこでアスレチックスは、有望な若手にはそれらを取得する前から複数年契約を結び、年俸の高騰を抑制しました。

◆トレード

年俸が高くなった選手は躊躇なくトレード対象となりました。トレードでの獲得対象は上記の要素を満たした若い選手とすることで、年俸の抑制効果もありました。また移籍金を運営資金とすることで、チーム編成の効率を上げる効果も有りました。

◆スカウト

スカウト活動での特徴は「主観の廃止」です。データを重んじ、上記の要素を満たした選手を評価しました。また不確実性を排除するために、本人の将来に悪影響となる要素として、本人の性格や交友関係なども調査しました。



短所

アスレチックスの戦略における短所は2点だと考えます。

一点目は「短期決戦での脆さ」です。アスレチックスは毎年のようにプレーオフに進出しますが、ワールドシリーズの進出はありません。

アスレチックスの野球は徹底して「得点期待値」をコントロールし、レギュラーシーズンのような長丁場での勝率を高める野球です。

そのためプレーオフのような短期決戦では分母が少ないために「確率の揺らぎ」が大きくなる傾向があります。

また短期決戦は運の要素も大きいことから、得点期待値のコントロールが難しくなるといった面もあります。

二点目は「広く知られてしまった」ことです。戦略の総称が「マネーボール」と言われるほど、球界に浸透しています。

結果、アスレチックスが重要視していない要素と重要視している要素を他球団が一部真似をするようになりました。

例えば、出塁率の高い選手は以前ほど低年俸で獲得できないようになりました。アスレチックスの戦略は理に適っている一方で、他球団が軽視していた部分に重きをおいたことから成功したと言え、戦略が広く知れ渡った今では短所も多い戦略であると考えます。

まとめ

アスレチックスの戦略は「得点期待値」という独特な基準を設け、限られた資金で効率的なチームを作り上げることだと言えます。

しかし最近では守備・走塁の比重が増えつつあり、盗塁や犠打の数が以前よりも増えています。これらについてビーンは「状況は絶えず変化する」と語っています。

現在で広く知れ渡ったアスレチックスの戦略(=マネーボール)ですが、今後は新たな戦略を用い、限られた資金で強いチームを作り、世界の野球ファンを再度驚かせることを期待したいと思います。

以上、アスレチックスの戦術「マネーボール」とは?チーム躍進の理由を徹底解説!…の話題でした。








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