野球の技術解説

現代の『魔球』ナックルについて・ナックルボーラーを特集

現代の『魔球』ナックルについて・ナックルボーラーを特集

変化球は様々な種類があり、

近年は既存の変化球をベースとした新しい変化球も続々と登場しています。

そんな中、「魔球」と言われたらどんな変化球を想像するでしょうか?

「ナックルボール」を想像する人も多いのではないかと思います。

その独特の軌道や習得の難易度から持ち球としている選手は少ないですが、

そういった点も魔球としての地位確立に一役かっていると考えます。

本記事では、そんなナックルボールについて解説したいと考えます。

ナックルボール

まずナックルボール(以下ナックル)とは、変化球の一種になります。

限りなくボールの回転を押さえることで風や空気等の影響を受け、

不規則な変化をするボールになります。

名前の由来は、

曲げた指の第一関節(Knuckle)部分でボールを握り、

突き出すように投げるからという説、

この変化球を投げていたエディ・シーコットのニックネームが「Knuckles」だったからという説、

トッド・ラムジーが投げていたナックルカーブとよく似た変化をしていたからなど、

メジャーリーグの文献によっても諸説ある。

なお一般的には略して「ナックル」と呼ばれます。

ナックルと呼ばれるまでー

変化の原理は、

回転数が少ないことから揚力が著しく少ない一方で、

4分の1から1回転というわずかな回転により空気にぶつかる縫い目の位置が不規則に変化し続け、

この縫い目と空気抵抗による不規則な後流の変化が球の軌道を不規則に変化させる。

ナックルは左右の変化が顕著だが、縫い目の効果は上下にも作用しており、

さらには縫い目の位置によって後流の大きさも変化するために減速効果も変化してボールの速度も乱れることになり、

上下左右前後あらゆる方向に不規則に変化している。

また、完全に無回転な球が投げられても空気と縫い目の一つが最初にぶつかることで球は緩やかに回転を始めるとされている。

メリットは、

打者はもちろんピッチャーとキャッチャーにも予測不能な不規則な変化をすることから打者がミートすることが難しいということです。

デメリットは、

環境の影響を受けやすい、

捕手が捕球しにくい、

投球の難易度が高い、

制球ができない、

ランナーのケアをしにくい

などがあります。

しかし、

ナックルだけで打者を押さえるピッチャーもいるため、

デメリットを補って余りあるメリットがあると考えます。

なおナックルボーラーが登板する時は、

捕球の難度が上がることからキャッチャーが変わったり、

キャッチャーミットが大きくなったりします。

次項からは実際のナックルボーラーを紹介します。

日本プロ野球のナックルボーラー

日本プロ野球でナックルボーラーは多くありません。

また、ナックルを軸に投球を組み立てる選手は更に少なくなります。

そんな中で代表的な選手を二人紹介したいと思います。

前田幸長

前田選手は1988年ドラフト1位でロッテオリオンズに入団。

1995年まで在籍し先発として活躍した後トレードにて中日ドラゴンズへ移籍、

1996年から2001年までの在籍中盤に中継ぎとなりチームに欠かせない存在となりました。

その後はFA移籍し2007年まで読売ジャイアンツに在籍、

中継ぎとして活躍しました。

2008年にはテキサス・レンジャーズとマイナー契約、

3Aオクラホマでプレーし現役引退しました。

球種としては、140km/hのストレートとナックルがありましたが、

ナックルボーラーとしての特徴は、一般的なナックルの「山なりで揺れながら落ちる変化」ではなく、

「ストレートと同様の軌道から不規則に沈む変化」のナックルボールを投じていた点です。

これは一般的なナックルとは違い微妙な回転がかかっていたことが要因になります。

なおこの独特なナックルは、

フォークボールの代替として高校の先輩に教わった変化球だそうです。

通算での与四球率は3を越えていますが、

中継ぎ転向後も3を下回っていることから、

ナックルボーラーとしてはかなり優秀ですが、一般的にも標準より優秀であるといえます。

山崎康晃

山崎選手は2014年ドラフト1位で横浜DeNAベイスターズに入団。

入団一年目からクローザーとして活躍し新人王を獲得。

また、入団から4年連続20セーブというNPB記録を持つとともに、

2018年には37セーブで最多セーブ投手を獲得しており球界を代表するクローザーといえます。

山崎選手というと、

最速153km/hのストレートと落差の大きいツーシームが有名ですが、

スライダーとナックルも投げることができます。

なおナックルの特徴は、

一般的な不規則な変化をするボールと鋭く縦に落ちる変化のボールの二種類あることです。

ただし、二年目以降は投じることはほとんどなく、

今では下記に紹介するような、オールスターゲームだけで投げる程度となっています。

メジャーリーグのナックルボーラー

メジャーリーグには日本プロ野球にはいない「フルタイム」のナックルボーラーがいます。

フルタイムナックルボーラーとは、

ナックルを軸に投球を組立てているピッチャーになります。

では代表的な選手を二人紹介します。

ティム・ウェイクフィールド

1988年にピッツバーグ・パイレーツに野手として入団。

マイナーで野手としての限界を感じていたところ、

キャッチボールの際に投げていたナックルがコーチの目に留まり投手に転向。

するとすぐに成績を残しますが、

その後精彩を欠いたシーズンを連続していた1995年のスプリングトレーニング中に解雇されると、

その後すぐにボストン・レッドソックスと契約。

2012年の現役引退まで主に先発ピッチャーとして活躍し、

2007年には17勝をあげるなどし、通算200勝の成績を残しています。

ウェイクフィールドのナックルボーラーとして特徴は、

投球のほぼ全てがナックルである「フルタイムナックルボーラー」であるということです。

基本的には100km/h強のナックルを投げ、

たまに投げるカウントを整えるためのストレートは120km/h台でした。

その投球スタイルと肩への負担が少ないナックルの特性を活かし、

先発ローテーションの合間にロングリリーフをしたり、

45歳まで現役でいたことも特徴だと考えます。

しかし、通算での与四球率は3.3を越えており低いとは言えません。

これはナックルのコントロールが難しいことが起因しています。

R.A.ディッキー

1996年にドラフト一位でテキサス・レンジャーズに指名されますが、

入団前のメディカルチェックにて右肘の靱帯のうち一つを生まれつき持っていないことが判明します。

入団後は2003年には9勝をマークするなど、

一定の成績を残しました。

2004年まではストレートとスライダーを投げ、

決め球にチェンジアップやスプリットを投げていましたが、

メジャーで生き残るためにナックルを習得。

その後はマイナーや他球団を渡り歩き、ニューヨーク・メッツに移籍した2010年に11勝をあげ飛躍します。

その後はナックルボーラー初のサイ・ヤング賞を受賞や最多奪三振賞の受賞等、

メジャーを代表するピッチャーとなりました。

その後はトロント・ブルージェイズとアトランタ・ブレーブスに所属。様々な球団を渡り歩いた「ジャーニーマン」でもあります。

ディッキーは投球の約85%がナックルですが、

そのナックルの特徴は、

平均球速が120〜130km/hと一般的なナックルより速いことです。

変化量よりも球速を重視していることもあり、

キャリアハイとなった2012年は230奪三振をマークする一方で、

四死球は54個と少ないことも特徴の一つです。

なおカウントを整えたい時や打者の目線を外す際には130km/h台中盤のツーシームも投げます。

番外編

吉田えり

吉田選手はナックルを武器に高校二年生時に関西独立リーグ入団するなどし「ナックル姫」と呼ばれた選手になります。

小・中学校と野球はやっていましたが、

高校進学後に男子との体力差を感じたことから、

その差を埋めるためにナックルを習得したそうです。

その結果、正直に言うと差が埋まったとは言えませんが、

海外の球団を含め、常に男性の中でプレーし続けられたことも事実ではあります。

話題性ももちろんありますが、ナックルで体力の差を縮めたことも、

その要因であると考えます。

生田庸平

ナックルはその特殊性から、多くのマンガに登場しています。

生田庸平はマンガ「Dreams」に登場するキャラクターであり、

ナックルを武器とするピッチャーになります。

そのナックルは二種類あり、

一般的なナックルと高速ナックルの「魔球KOBE」です。

魔球KOBEは、150km/hを越えて揺れ落ちるという変化球で、

生田が回転しているバイクのタイヤに板越しに指を押しつけて鍛えたことで習得した球です。

名前は生田が被災した阪神大震災が由来になります。

発表当時はあり得ない球でしたが、

前述したディッキーの登場や、大谷選手が投げる150km/hのフォークなど、

以前はあり得なかったと思われた変化球も今はあります。

魔球KOBEも現実となる日がくるかもしれません。

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(Dreamsは25位でした。)

まとめ

キャッチボールをやっていて、ナックルを試した選手も多いかと思いますが、

綺麗に少ない回転で投げられた経験というと、ほとんどの人が無いと思います、

投げられた経験があっても、

再現し続けることができる人となると更に少なくなるはずです。

この「再現性」がナックルの最も難しい点であると考えます。

一球一球の難易度が高いにも関わらず、

たった一球で勝負が決まる場面で投じるのは、

並々ならぬ勇気と自分を信じる気持ちも重要ですが、

再現し続ける技術が最も重要になると考えます。

なおディッキーはネットの情報や動画で投げ方を調べ、

四六時中ボールを触り、

とにかく球数を投げることで「再現性」を高めていったようです。

なおディッキーがナックルボーラーの先駆者であり200勝投手でありチャーリー・ハフに

「ナックルが有効な球であるならば、何故もっと多くの人が投げないのか」

と尋ねた際、ハフは

「非常に忍耐を要する球で、ほとんどの人はその苦しみに耐えられないからだよ。」

と回答しています。

投げられるようになるまでの練習をこなす忍耐も必要ですが、

再現性を維持し続ける忍耐も重要であるということだと考えます。

ピッチャーからするとメリットの多い変化球であるナックルですが、

様々な難しさがあるのもナックルになります。

途方もない道ではありますが、

その道が活路になる選手もいます。

自分にとって活路になると感じたのであれば、

是非チャレンジしてみてください。


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