「キタ・リョウト」。
50m5秒9、高校通算16本塁打の『俊足強打』の左打者。
潜在能力の高さを買われ、高校1年の春からリードオフマンとして起用されている。
良さはなんといっても、ギータこと柳田(ソフトバンク)選手のような豪快なスイング。
プロ野球選手でも試合となると、フルスイングするのが難しいが、しっかりと振ることが出来る来田選手。
見る者を虜にするプレーヤーとしてチームメイトの中森選手と共に2020年のドラフト候補である来田選手を見ていこう。
来田涼斗のプロフィール
来田涼太は 2002年度生まれでミレ二アル世代の後の世代です。
投打:右投左打
身長:178cm
体重:84kg
ポジション:外野手
所属:明石商
学年:2年
ジュニア オリックス・バファローズジュニア 2014年
中学 神戸ドラゴンズ 2015年,2016年,2017年
高校 明石商 2018年,2019年,2020年
全国大会(中学) 中学2年 全国大会優勝
全国大会(高校) 高校1年 2018年全国高校野球選手権大会(1回戦)
高校2年 2019年選抜高等学校野球大会(ベスト4) 2019年全国高校野球選手権大会
明石商業に入学した昨年の春、当時の野球部員は129人にものぼった。この大所帯の中、1年春から不動の1番に座る来田選手。狭間善徳監督は、
「1年生から1番はなかなかいない。将来のある子。経験を積んでくれたら。足も速い」
と、そのポテンシャルの高さと将来性を期待し、起用したことを述べている。
中学時代
中学時代は神戸ドラゴンズに所属。
神戸ドラゴンズOBには栗山(西武)選手や坂口(ヤクルト等)選手がいる。
そこで中堅手として、2年夏に全国大会で優勝。
大阪桐蔭や履正社といった30ほどの強豪校からスカウトが来る中、明石商業を選んだ。
そこには、同校OBで兄の渉悟さん(日体大2年)の存在が大きかった。
「兄の練習を見に行って、狭間先生(監督)の熱心な」指導を見て、『この人に教わりたい』と思いました」
また、兄の高校最後の夏、県大会決勝戦敗退を見届けた来田選手は、
「兄ちゃん、俺、明商行くわ」
と、当時まだ甲子園出場1度の明石商業行きを宣言。
成長できる環境、そして兄の悔しさを晴らすため、高校の進路を迷わず明石商業に決めた。
根拠のある練習法
「野球は確率のスポーツ」と話す狭間善徳監督。
100人を超える大所帯の明石商業は効率化を図るため、5班に分けて複数の練習を同時に行う。
シーズンを通して取り組んでいるのが体作り。
授業を終えた選手たちがグラウンドに姿を現わすと、まず手に取るのはグローブでもバットでもボールでもなく、大きな弁当箱。
明石商業の練習は毎日、2合飯を平らげるところから始まる。
ウエイトトレーニングは月・水・金曜日の週3回。5日毎に体重を測り、設定値に届いていないと階段走のペナルティーが課される。
これにより入学時から10kg増量は当たり前。
上級生か下級生かは太ももを見れば一目でわかる。それだけ食事もランニングも量をこなしている。
やろうとしている野球のレベルは高いが、プレーには必ず根拠、基準がある。
バントが多い攻撃面でもその選択には根拠がある。甲子園での戦いぶりから明石商業=バントのイメージが定着したが、練習で特別バントに力を入れているわけではない。
フリーバッティングで最後の数球は必ずバントの他にもバスター、エンドランを取り入れ、冬場のケース打撃ではむしろ、
相手のバントシフトの裏をかく攻め方を繰り返し練習していた。
「バントやと思ってるところをバントじゃなかったらビッグイニングに出来るかもしれんし。毎年、状況に応じて対応出来るだけの練習はしてるけどね。バントやスクイズや言われるけど、あの状況の中で、あのバッターで次のバッターと何回、何点差って考えた時にどれが一番勝つ確率が高いのかって選択した結果、たまたまそうなっているだけで、それだけじゃないんやけどな。最低ランナーを送れてあわよくば1、3塁が狙えるバッターであれば、そっちの方が確率が高いやろからそっちを使うやろし走者が出れば判で押したように送るのと、様々な選択肢がある中で送るのとでは、意味合いが全く違う」
と語っている。
根拠のある練習や戦術。
そこ魅力を感じた来田選手が入学を決めた理由が分かる。
1試合2本のホームラン
春のセンバツ甲子園、智弁和歌山戦。
彼は、試合の幕開けで先頭打者ホームランを放ち、そして、試合の幕切れとなるサヨナラホームランと最初と最後を華々しく飾った。
強豪、智弁和歌山。先頭打者ホームランを放ち、輝きを見せる。鮮烈な印象を与えていた。
そして、同店の9回裏に打席が回ってきた。キャッチャーは外に構えたが、142㎞のストレートが真ん中ややインコース付近に投じられた。
と思った瞬間、鋭いスイングで完璧に捉え、打った瞬間それと分かる打球がライトスタンドにライナーで飛び込むんでいった。
サヨナラホームラン。右手を高く天に突き上げ、ダイヤモンドを一周した。
「後ろに頼れる先輩がいたので、思い切って振れました。狙っていました。芯に当たったので、入るかな…と思いました。一塁を回った辺りで分かった。今までで一番気持ちのいい本塁打です。2本目の方が完璧でした。中森を援護しなきゃ、と思ってました」
人生初というサヨナラ弾だった。
この冬を越えて体重の増加に加え、武器のスイングスピードに磨きをかけ。
体幹トレーニングで軸のぶれない体もつくり上げた。
この打席では、追い込まれてから『ノーステップに近いすり足打法』に変更するという修正力もみせた。
1本目のホームランも追い込まれたから放っていた。
グレードアップした肉体
1日5食計10合の米を食べて、1年夏の甲子園出場時は74キ㎏だった体重は、2年春の甲子園時には83㎏に。
一回り大きくなって、甲子園に戻ってきた。体重の増加で「打った瞬間から打球が伸びていくようになった」
と変化を感じているという。
現在は84㎏だといい、体重が増えたことでフルスイングしなくとも打球が伸びていく。
夏の甲子園一回戦、花咲徳栄の左腕・高森選手との対戦で、体を開かずに逆方向にコンタクトした打球は、レフトオーバー。
フルスイングではなく、前途したノーステップに近いすり足での大飛球。パワーアップした肉体があってのことだ。
将来像
狭間監督は、
「来田にバントのサインは出したことがない。打たせた方が確率が高い」
と言わしめるほど信頼を置かれている。ただ、
「あいつはタイミングを計れない男なんです」
「センバツの智辯和歌山戦だって、2本とも2ストライクに追い込まれたあとのノーステップだから打てたんですよ」
と課題も述べている。
これからタイミングを上手く取ることが出来れば、手の付けられない大打者になるだろう。
そうなれば必然的に、来年のドラフト上位となることは間違いないと言える。
明石商業のリードオフマンは、高校ラストイヤーとなる一年でどんな輝きを放っていくのだろうか期待して見ていきたい。
参考資料
https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/baseball/hs_other/2019/08/15/_split_023/amp_2.php
https://timely-web.jp/article/1570/