野球の技術解説

『キャッチャーの配球』を元球児が解説・リードを制す捕手は野球を制す

こんにちは、橘です。

今回はキャッチャーの配球について小学校時代から社会人まで捕手一筋で野球に携わってきたライターさんに記事を執筆してもらいました。

橘裕司
橘裕司
めちゃくちゃ詳細、そしてわかりやすくてびびった。配球は奥が深い・・・。

現役でキャッチャーのポジションを担っている球児、そして指導者にもタメになる内容盛り沢山ですので、ぜひ読んでみてください。

では参りましょう。

はじめに:キャッチャーで求められる能力とは?

キャッチャーに求められる能力

キャッチャーに求められる能力は大きく分けると、

  • キャッチング、
  • スローイング、
  • インサイドワーク(配球)、

の3つになります。

「キャッチング」と「スローイング」について、以前作成した記事は下記ですので参考にしてみてください。

本記事では、「インサイドワーク(配球)」について説明したいと思います。

野球でキャッチャーが求められる配球とは?

配球で求められるもの

まずインサイドワークとは、言葉の意味は”頭脳的にプレーする技能”です。

野球では、キャッチャーの配球(ピッチャーの投げる球種・コース)を決める行為の意味で使われます。

「インサイドワークが優れている」

というのは、

「配球が良い」

という意味と同義になります。

では、

「配球で目指すこと」

とは何でしょうか?

よく勘違いされるのは、「打者の裏をかくこと」です。

これは間違いではありませんが、正解でも有りません。打者の裏をかいたとしても打たれることはあり、打たれれば意味はないからです。

正解は「打者を打ち取れる配球」になります。

では、

「どうすれば打者を打ち取れるか?」

ですが、これは明確な正解がありません。

「○球目に○を投げれば打ち取れる」のであれば皆それを選択しますが、実際は100%打ち取れる配球は存在しません。

しかし、

「打ち取る可能性の高い配球」

は存在します。

次項からは、具体的な話しを交え、「打ち取る可能性の高い配球」について説明したいと思います。

打ち取る可能性の高い配球

キャッチャーのリード

「打者を打ち取る」

という結果を得るためには、結果から順に考えていくことが重要です。

打者を打ち取るには、打者に打ち損じさせるか、バットに当てさせない必要があります。

ではその可能性を高めるには何が必要か?

それは「打者に的を絞らせない」ことと、「打者の嫌がる配球をする」ことだと考えます。

では両方について説明します。

打者に的を絞らせない

打者に的を絞らせない

打ち取る為には打者に的を絞らせないことが重要です。

球種やコースが分かっていれば、打者は対策を取ることが出来、打ち取る可能性は大きく下がります。

また、後述しますが、配球の重要な要素である「打者のタイミングを外すこと」ができないため、打たれる可能性が上がります。

仮に大谷選手(アナハイム・エンゼルス)であっても、直球だけと分かっていれば、被打率はもう少し上がってくるはずです。

では「的を絞らせない」ためにはどうしたら良いでしょう?

同じ球種・コースの続けたり、配球の中で比率が高いと絞られやすくなります。

よって、(意図がある時は除き)あまり同じ球種・コースは続けない方が良いでしょう。

極端な話しだと、1球ごとに別の球種がくれば打者は的を絞ることは出来ませんが、良い精度を持った球種が多く持つ投手は少なく、現実的ではありません。

逆に一打席中に一球しか来ない球種に的を絞ることも難しいです。

また、敢えて同じ球種やコースを続けたり、比率を挙げることで逆に打者に的を絞らせない効果もあります。

よって、Aの球種とBの球種とCの球種がある時に、全球種を使うことで的を絞らせないこともありますし、逆に二種類の球種しか使わないこともあります。

いずれにしても意図をもって、球種やコースを決定することが重要です。

打者の嫌がる配球をする

打者が嫌がる配球

「打者の嫌がる配球」

というのは、

「打者に自分のバッティングをさせない」

と同義かと思います。

なお「打者の嫌がる配球」にはセオリーがあります。

それは、

「両極端に攻める」

というものです。

球種で言えば、

「速い球の後に遅い球、遅い球の後に速い球」

という両極端です。

両極端の球種を配球することで、実際の速度以上に体感では速く(遅く)感じ、タイミングを外しやすくすることができます。

コースで言えば、「内角の後に外角、外角の後に内角」という両極端です。

内角の後に外角へ配球することで打者からはより遠く見えますし、外角の後に内角へ配球することでより近く見えます。

高低にも両極端はありますが、基本的にストライクゾーン内の高めに配球することはありません。

これは、高めは打者の目が近く打ちやすい為です。

また高めは飛球になりやすく、場合によっては長打になり得ることも理由の一つです。

逆に直球を高めのボールゾーンに配球することで、打者は手を出しやすいうえに空振りとなる可能性もあるため、その場合は高めに配球することもアリです。

長々とセオリーについて説明しましたが、多くの打者もこのセオリーは知っていると思います。

なので、敢えてセオリー通りとするか、セオリー通りとしないかもキャッチャーの配球の見せどころになると思います。

キャッチャーセオリー

また、打者の打ち気を逸らすことも、

「打者の嫌がる配球」

だと思います。

打ちたがっている打者に緩い球種を配球することがそれにあたります。

また打者の待ちが分かっている時は、それ以外の球種を配球することも「打者の嫌がる配球」になると思います。

逆に打者が待っている球種をボールゾーンに配球することで空振りや凡打とすることも出来ます。

それらをバランス良く配球することで、

「打者に自分のバッティング」

をさせないことが大事です。

なお様々なパターンが有る中で、どうやって学ぶかの第一歩は、キャッチャーに限らずですが、当然打席に立つ機会は有ると思います。

そういった状況で「自分がどういった配球が嫌か」を考えるのがまず第一歩だと思います。

配球で考慮すべき情報

情報

配球は前述したような「打者を中心とした配球」であればセオリーはありますが、実際の試合では決まった形が有るわけではありません。

下記で説明するような情報を組み合わせ、状況に応じてシームレスに変化しつつ、その時に「最も打たれない配球」を選択していくことが必要です。

下記でその情報の例について説明します。ただし、下記の情報が全てではなく、意外と「勘」が重要だと考えます。

例えば、

「なんだか緩い球はやばい感じがする」

という感覚は大事です。

それを磨くには意図を持って配球し、成功や失敗の経験を重ねることが最も重要だと考えます。

では、配球で考慮すべき情報について説明します。

ピッチャーの能力と状態

投手

そのピッチャーの強みは何か、コントロールと各球種の精度はどうか、その日はどの球種が良くてどの球種が駄目なのか把握することは必須です。

ピッチャーの状態によって攻め方が変わりますし、例えばピッチャーの球種で、球数を投げることで状態が上がるのであれば、序盤に有利なカウントで要求することが出来ます。

カウント・ランナーの有無(アウトカウント)

ランナー走者

配球の基本は「ストライク先行」です。

ストライク先行であれば、際どいコースやコントロールの難しい変化球を要求することもできます。

逆にボールが先行しているときは、コントロールの良い球種を配球しなければいけなくなります。

またランナーの有無でゴロの併殺が欲しい場面や、得点圏にランナーがいてフライは打たれたくない場面があります。

これらはアウトカウントによる点もあり注意が必要です。

データの活用

データ

打者としての特徴も大事ですし、チームとして作戦や方針、特徴も重要になります。

打者の得意なポイントや打ちたいポイントが分かっていれば、そこを避けることで打ち取れる可能性が上がりますし、チームとして、

  • 早いカウントから打つのか、
  • ランナーでたらスチールか、エンドランか、

等を知り活用することで、相手に流れがいくことを防ぐことが出来ます。

それらが試合前日までに分かっていれば良いですが、試合前の練習や試合が始まってから得られる情報もあります。

また、打席の中での打者を観察することも大事です。

ボールを見逃した時の見逃し方、空振りの仕方、スイングの軌道・癖等から得手・不得手、好みや待っている球等が分かることがあります。

常にアンテナを張り、注意深く相手を観察することが大事です。

打線の一巡目の結果と観察の内容を二巡目の配球に活かすことも、

「データの活用」

になります。

以上を組み合わせ、配球を組み立てるわけですが、打者・点差・カウント・ランナーの有無・グラウンドの条件等、様々な条件が刻一刻と変わっており同じ条件であることは少なく、思い通りになることは多く有りません。

よってその時その時で最善となる配球を選択し、シームレスに変化していく力も要求されます。

それでもどうしても迷ってしまったら、下記2点の考えが有効です。

  • アウトローに配球する。

アウトローは狙われていない限り、一番安全なコースだと考えます。

  • 一番後悔が少ない配球をする

打たれた時に後悔する配球もあります。打たれないのがベストではありますが、それでも迷った時はこのような判断基準も必要と考えます。

番外編:ピッチャーが投げたい球を要求する配球

上記で説明してきたのは、「打たれるの可能性の低い配球」についてですが、こういった配球は日本では一般的ですが、メジャーでは別の考えがあります。

それは「投手の投げたい球を投げさせる」という考えです。

城島健司選手(元・阪神タイガース)がシアトル・マリナーズ在籍時に主力投手陣の信頼を勝ち取るに至らなかったのも、この考えの差異が要因であった可能性もあります。(但し、控え投手から信頼は勝ち取っていたという話もありますので真相はマリナーズ投手陣のみ知り得るというところでしょうか)

7月のオールスターを迎える時点で、代わって正捕手となったロブ・ジョンソンと城島の勝負づけは済んでいたと言えよう。マリナーズ投手陣の成績は、ふたりの捕手の間では著しく違っていたからだ。

● ジョンソンがマスクをかぶった場合
25勝16敗 防御率2.93

● 城島がマスクをかぶった場合
13勝19敗 防御率4.91

数字の上でも明らかになっただけでなく、当時のチームの先発3本柱であるヘルナンデス、ウォッシュバーン(後にタイガースにトレード)、ベダードの3人がジョンソンに受けてもらうことを切望した。ワカマツ監督もこのリクエストに応えるように、ジョンソンを正捕手として選び、城島は控えに甘んじるようになった。

引用:Number

なお、この考えを選択することもあります。

それは、

「ピッチャーの気持ちをノせたい時」

です。やはりピッチャーを気持ち良く(気分良く)投げさせることも時には必要です。

「気持ちがノる」ことで、球の質やテンポが良くなり、結果的に打者を抑えることに繋がることもあります。

よってこういった考えの引き出しが有ることが重要です。

配球について学ぶには

野球の勉強

まず「野球観戦」が良いと考えます。

特にプロ野球中継は学べる点が多くあります。

観戦するにあたっては、自分ならどうするかを考える、キャッチャーの配球の意図を考える、次の球を予想する、打者の待ちを予想する等をし、そういった考えを自分の配球に落とし込むことが出来ると成長に繋がります。

なおプロ野球でいうと、短期決戦(クライマックスシリーズや日本シリーズ)ではリードが変わることもあるようです。

近年はセ・パの交流戦がありますが、無かった頃の日本シリーズはデータと実際を照らし合わすための確認作業を行うこともあり、結果的に打たれることもあったようです。

また書籍を読むことも大事です。私が読んだのは「野村ノート」になります。

 

 

強打だけでなくID野球の生みの親である名捕手野村克也氏の著書です。

本著では配球についての説明があり、外角低めの重要性や配球の種類について説明がありますので読んだ方が良いです。

野村氏の著書は他にも野球理論や配球理論が説明されているものもあります。

私は現役の時に「野村ノート」を読みましたが、後輩にあげてしまったため、改めて野村氏の著書を読もうと思います。

配球について、キャッチャーからのお願い

この記事を読んで頂いた指導者の方にお願いがあります。

結果だけを見てキャッチャーを叱るのは止めてください。配球に問題がある時は、意図を聞いてください。

意図が無ければ問題があると思いますが、意図が間違っていれば、それを正すことで成長することが出来ます。

頭ごなしに結果だけで注意されても成長することは出来ません。

また、ピッチャーの方にもお願いがあります。配球通りに投げて打たれたらそれはキャッチャーの責任です。でも絶対に責めないでください。

その代わり、責めるのではなく、「どうするべきだったのか」をバッテリーで話し合ってください。それがキャッチャーだけでなく、バッテリーの成長にも繋がります。

なおキャッチャー目線から見て、土壇場で有り難いピッチャーというのは下記3点がしっかりピッチャーです。

この点を磨いてもらえると、キャッチャーとしては助かるので意識してもらえる有り難いです。

  • アウトローへのコントロールが良いピッチャー

一番被打率が低いのはアウトローです。そのため、困った時に要求することがあります。その時にアウトローへ投げきってくれるピッチャーは有り難いです。

  • 満塁の場面、3ボール2ストライクで変化球を要求できるピッチャー

絶対にストライクが欲しい場面はストレートを要求しがちですが、当然バッターもストレートを待ちがちです。そういった場面で変化球を要求出来るピッチャーはありがたいです。

  • 自分の考えを教えてくれるピッチャー

何も考えていないピッチャーであれば問題有りませんが、大抵のピッチャーは自分の考えがあると思います。配球に対して不満を持ったままでは、息の合ったバッテリーとは言えません。キャッチャーが聞き取りすると同時にピッチャーからのアウトプットも大事です。

まとめ

筆者は小学校時代からほぼ捕手一筋で野球をやってきました。配球について、特別教えを受けたことはなく、自分で調べたことや試合の中で気付いたことをまとめました。

なお野村ノートに配球は3種類とし、下記のように分類されています。

それは、

  • 打者中心の配球
  • 投手中心の配球
  • 状況中心の配球

です。

3種類をバランス良く組み合わせることで「良い配球」に近付けると思います。

他の捕手の配球についての考えを聞く機会はあまりないと思いますので、本記事を読むことで参考となったり、視点が増えたり、考え方のヒントとなると幸いです。


POSTED COMMENT

  1. トヨピコ より:

    MLBでの城島氏についてですが
    安易に語らないでほしいですね
    相性の良かった投手は「ジョーはスケープゴートにされた」って言ってたんですから。
    MLBで正捕手やった城島氏しか分からない事ですよ。

    • Mr-Koshien より:

      ご指摘ありがとうございます。おっしゃる通りだと思います。一例として「可能性がある」というニュアンスで書くつもりでしたので、表現を改めました。

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