バッターボックスに入った時、どういった球を待つことが多いでしょうか?
「反応で打つ」という人もいると思いますし、これは千差万別かと思いますが、
ある程度のセオリーは存在します。
以前本サイトではキャッチャー目線からの配球についてはご紹介しました。

しかし、なかなかキャッチャーの目線をバッター目線に置き換えるのは、
キャッチャー経験者以外では難しいと考えます。
そこで本記事は、バッターが配球を読むためのヒントを紹介することで、バッターの配球を読む能力を向上させる記事を作成しました。
環境のレベルが上がっていくと、「配球を読む力」は必ず打者としての能力の助けになると考えます。
もちろん、これだけが正解ではありませんし、
現場の状況によっては正反対の回答になることもあるかと思います。
是非吸収し、自分の糧にして頂ければと思います。
打席に入る前に
キャッチャーはバッターが打席に入る前に、
配球の方向性を決めているケースがほとんどだと思います。
方向性に沿って配球をしつつ、
打席でのバッターの反応や状況の変化に合わせて変化していくものと考えています。
ここで言う「方向性」とは、欲しい結果を得るための流れやテーマの意味です。
具体的には欲しい結果を得るための勝負球とそこまでの配球の流れになります。
勝負球も重要ですが、勝負球を活かすための球も重要です。
よって、その方向性を踏まえて打席に入ることが重要だと考えますので、
本項では方向性を考えるヒントを紹介します。
①ランナーの状況
ランナーが一塁にいてアウトカウントが一死以下であれば、
キャッチャーは内野ゴロのダブルプレーが欲しく、進塁されることが最も嫌です。
よって進塁打になりにくい内野ゴロを目指す方向性を考えます。
具体的には引っかけたくなるような、
アウトコースの変化球や詰まらせたいインコースの速い球です。
一死以下で二塁にランナーがいる場合、
キャッチャーは進塁打を打たれるのが最も嫌です。
よって、ライト方向に打球(ゴロ・フライともに)が飛ばないような方向性で配球を考えます。
右バッターならインコース全般、左バッターならアウトコースの速い球などです。
一死以下で三塁にランナーがいる場合は、キャッチャーとしてはヒットを打たれるのはもちろんですが、
タッチアップに繋がるため、フライを打たれることが嫌です。
よって低めの球や速い球がメインになります。
緩く変化が大きい球はバットが下に回り込みやすいためフライとなる可能性が高いです。
高めも同様でフライとなる可能性が高いです。
上記はあくまで「方向性」なので、例えば「アウトコースの変化球でひっかけさせたい」と方向性を考えた場合、
より効果的にするために、それ以前でインコースの速い球がくる可能性はあります。
しかし、そのような方向性であればアウトコースが多くなることはほぼ間違いないため、狙いは絞りやすくなります。
また、盗塁を警戒していれば、阻止するためにも緩い球は要求しにくくなります。
よってキャッチャーが「盗塁があるかも」と考えている限りは、
速い球がくることが多いです。
しかし速い球だけ押さえることが難しいと判断していれば、
「盗塁の確率より低いタイミング」
に緩い球を要求します。
例えば初球などです。
他タイミングでもランナーが走りにそうになければ、緩い球を要求することはあります。
②自分のスイング
公式戦では事前に偵察が入ることは珍しくなく、
その際にチームとしての傾向はもちろんですが「○番はインコースが弱い」といったデータを押さえられている場合もあります。
また、試合会場で試合前の練習を行っている際には、
相手チームに練習を見られている可能性もあります。
その時に個人の特徴だけでなく、チームとしての特徴を押さえられていることもあります。
例えばバッティングに自信があるチームは「打ちたい」という気持ちが強いことから、
「打ち気」を逸らすために初球に緩い球を選択したり、間を作ったり、
ボールになる変化球やボール球で勝負することがあります。
試合が進み、配球の一貫性が見えてきた場合は、
バッテリーの癖や方針の可能性もありますが、自チームや自分が起因している可能性もあります。
相手の目線になった時(難しいですが)、
何か気付くことがあれば、相手がそこを突いてくる可能性にも留意した方が良いです。
③自分の成績
その日の自分の成績は最もと言えるほど重要です。
例えば凡退していれば、キャッチャーはその球種やコースをベースに配球を組み立てたいと考えます。
決め球には同じ球種を持ってきたり、タイミングが合っていなければ、凡退している球でカウントを整えたりします。
逆に打たれればその球種を要求しにくいのが正直なところです。
投げミスで打たれた場合や、アンラッキーなヒット(テキサスヒットなど)であれば、「運が無かった」とあきらめることができますが、
綺麗に打たれれば同じ球種は要求できません。よって自分の成績と打った球種・コースはかなり重要です。
また「打ったカウント」も重要です。
早打ちと感じた選手に出し惜しみ(決め球や初見となる球種を取っておく)はしません。
一方でじっくり見てくる選手にはカウントを整えたり、決め球までのストーリーを持って配球したりします。
例え一打席の結果であっても、キャッチャーには多くの情報をもたらすことになります。
情報を与えず、より多くの情報を得るためには「無駄な球は振らない」ことの徹底が重要です。
打席の早い段階は打つコース・球種をヒットにできる確率の高いポイントに絞ることで、振った際の安打率は維持できますし、
一振りで得られる情報は少ないことから有効です。
また、好みでない球に手を出さないことから、自然と投球数を増やすことができ、バッター側が得られる情報も増えます。
注意点は、相手の勝負が早い時は、追い込まれピッチャー有利のカウントでの勝負が増えることです。
勝負を急ぐ時・急がない時については後述していますので、参考にしてみてください。
④ピッチャーの球種・状態
ピッチャーが持っている球種を把握することは重要です。
またそれぞれの質と精度も重要な要素です。
なかなか打席以外で、ピッチャーの球種や質・精度を把握することは難しいですが、
キャッチャーは、その日に調子の良い球種を把握して配球を組み立てます。
それらは試合前の練習や試合の序盤で把握しています。
よって試合の早い段階で、
多い球種はキャッチャーが「試合で使える」と考えている球種になります。また、横からみても高低等分かることもあります。
一方で、高めに浮いている球種であったり、
精度が悪ければ、キャッチャーとしては勝負どころで選択しにくいです。
またカウントが悪い時にも選択しにくくなります。
なおピッチャーの球種と状態を把握することは、
「バッテリーの自信のある球種」
を把握することと同じ意味となります。
難しいことですがそれが分かれば、カウント等で球種を絞ることができます。
ただし序盤のピッチャー有利なカウントでは、
あえて精度の悪い変化球をキャッチャーは要求することがあります。
これはバッターに迷わせる意味と、
ピッチャーが球数を投げることで精度が上がってくることを期待しての配球になります。
その場合ボールゾーンの配球が増えますが、
甘く入る可能性も高いですので、
頭の片隅に置いておくと、ヒットにできる可能性が高まるかと思います。
⑤点差・イニング
点差やイニングによっては、ランナーの状況等に関わらず「バッター勝負」となることがあります。
これは点差があれば進塁打やタッチアップ等への警戒が少なくて済むためです。
また、上記の④でも説明した通り序盤であったり、
点差があればキャッチャーはその日に「自信のない球」を要求することがあります。
それは投げることで調子が上がってくることもあるからです。
打席の中で
①カウント
キャッチャーは勝負を急ぎたい時と急ぎたくない時があります。
急ぐということは、「早く追い込み、勝負する」ということとほぼ同じ意味です。
急ぎたい時は「流れが良い時」と「ピッチャーの調子が良い時」、
「バッターに考える時間を与えたくない時」です。
攻撃でも守備でも流れが良くて押せ押せの時は、
キャッチャーは流れを切らない為にも良いテンポでの配球を心がけます。
ピッチャーの調子が良い時は、調子が良いうちに勝負したくなることから、
自然と勝負が急ぎがちになります。
また、代打で選手が出てきた時や、ピッチャーの代わった直後は、
多くの情報を与えたくなかったり、考えさせる時間を奪うため、勝負を急ぐことがあります。
逆に急ぎたくない時は「流れが悪い時」、「ピッチャーの調子が悪い時」、「バッターを迷わせたい時」です。
流れが悪い時は、流れを切りたいため、勝負を急がなかったり、間を取るようにします。
またピッチャーの調子が悪ければ、復調を待つために丁寧な攻めとなりますし、
球種も使うする球種も増える傾向があります。
コントロールが悪い時は、早めに追い込んでおきたいため、
その限りではありません。バッターを迷わせたい時も丁寧な攻めとなり、
勝負が遅くなる傾向があります。
例えばノーボール時に追い込まれている際、
バッテリーが勝負を急いでいれば三球勝負の可能性が高く、
そうでなければ「おためし」の球が来ることがあります。
また追い込まれる前も、急いでいればストライクゾーンの配球が増え、
急いでなければその逆になります。
ピッチャー有利のカウントであれば、ボールゾーンでの配球もありえますが、
バッター有利のカウントでボールゾーンの配球はかなり勇気を要します。
よってストライクゾーン付近の、それも精度に自信のある球種が来る可能性が高くなります。
②それまでの結果
それまでの結果とは、そのカウントまでどういった球が来て、
自分がどういった反応をしたかになります。
例えば打ち気を見せて見逃していれば、近い速度の球種やコースが狙い球かもとキャッチャーは考えますし、
完全に外されて見逃していれば、違う球種やコースが狙い、
もしくはタイミングが合っていると考えます。
これは余程のボールでなければそのように判断します。
また、スイングやファールでも同様で多くの情報をキャッチャーにもたらします。
スイングに癖があれば、その弱点を突くような配球になりますし、
ファールになる可能性が高いスイングとコースであると判断すれば、
そのコースを繰り返しますし、良い当たりのギリギリファールであれば、
そのコースと球種はその試合で要求することは考えにくいです。
まとめ
配球はキャッチャー目線であれ、打者目線であれ「相手の嫌なことをする」というのが最も攻略に近いと思います。
例えばキャッチャー目線では、「初球は振りそうにない」と思っていたら初球を打たれたり、
「ゴロ打たせたい(フライを打って欲しくない)」時にフライを打たれたり等したらものすごく嫌です。
打者でもカーブが苦手なのにカーブを続けられたら嫌だと思いますし、
インコースが上手く捌けないのにインコース続けられた嫌だと思います。
そういった「相手が嫌なことやる」という視点を持つと「自分が嫌なことを相手がしてくる可能性」に気づくと思います。
すると「自分がされたくないこと」を考えることで、相手の戦術(配球含む)を特定しやすくなる考えます。
また、もう一点重要なのは「想像する」ことです。
「相手(キャッチャー)にとって自分(バッター)をどのように見えているか」を想像することで相手の戦術を特定しやすくなります。
キャッチャーはバッターが嫌がる配球を考えますが、
それはテーマとして決まっている場合もありますが、
バッターの反応を見てフレキシブルに変化していくものでもあります。
よって自分が「相手にどのように見えているか」や「どういった反応をしているように見えたか」を把握することで、相手の戦術(配球)を特定しやすくなります。
以上がバッター目線で考える配球になります。
冒頭でも説明したとおり、これが全てではありませんし。
どれだけ考えたとしても一瞬の「ひらめき」が勝る場合もあります。
しかし、考えないことには始まりませんし、自分なりの理由があれば、失敗したときの分析も明確になり易く、次に活かしやすいです。
またピッチャーの目線でも、キャッチャーが欲しい球を知ることで練習に活かせる点もあるかと思います。
本記事が、配球を考えるヒントやきっかけになれば幸いです。